大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和54年(わ)1913号 判決

主文

被告人を懲役四年六月に処する。

未決勾留日数中一三〇日を右刑に算入する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は法定の除外事由がないのに営利の目的で

第一  黄衍理、山下こと堂園浩男らと共謀のうえ、宮川こと池田勝に対し、

一  昭和五四年八月三日ころの午後六時三〇分ころ、横浜市南区庚台三番地の一庚台コーポ二―C花家良枝方において、フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩である覚せい剤粉末約一〇〇グラムを

二  同月四日ころの午後五時ころ、同市中区真砂町三丁目三二番地先路上に駐車中の普通貨物自動車内において、前同様の覚せい剤粉末約一〇〇グラムを

譲り渡した

第二  黄衍理、李松和らと共謀のうえ、同月二七日ころの午後九時四五分ころ、同市港北区岸根町四八一番地の七被告人方において、大原こと住吉勝治に対し、前同様の覚せい剤粉末約三〇〇グラムを譲り渡した

第三  黄衍理と共謀のうえ、同年九月六日午前九時四〇分ころ、前記被告人方において、前同様の覚せい剤粉末約〇・六四一グラム(鑑定残量〇・五八一グラム昭和五四年押第四七一号の一)を所持した

ものである

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示第一の一、二、第二の各所為は刑法六〇条、覚せい剤取締法四一条の二第一項二号、二項、一七条三項に、判示第三の所為は刑法六〇条、覚せい剤取締法四一条の二第一項一号、二項、一四条一項に該当することろ、いずれも懲役刑のみを科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役四年六月に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中一三〇日を右刑に算入し、押収してある覚せい剤二袋(昭和五四年押第四七一号の一)は被告人が所持した覚せい剤であるが被告人以外の者の所有に係るので覚せい剤取締法四一条の六但書を適用して没収しないこととする。

(量刑理由)

被告人の本件各犯行は営利の目的で覚せい剤計約五〇〇グラムを譲渡し、〇・六四一グラムを所持したというものであるが、これらの犯行は被告人が香港の中国人覚せい剤密売組織から日本国内での覚せい剤の売りさばきの依頼を受け、大量二キログラムの覚せい剤を暴力団関係者等に売却したものの一部にあたるものであつて、覚せい剤の蔓延が深刻な社会問題となつている日本の現状及び被告人には昭和四九年八月八日横浜簡易裁判所において窃盗罪で懲役一年、執行猶予四年に処せられた前科のあることに照らして考えると被告人の責任は極めて重大なものがあるが、反面被告人は右取引において自分自身は利得を得ていないこと、現在本件犯行を深く反省していることなどの事情もあり、その他諸般の情状をも合わせ考慮し、主文の刑を量定した。

よつて、主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例